天使の贈り物 愛しのホイコーロー

ある献立を無性に食べたくなり、まるで催眠術にでもかかったかのように、しばらく頭から離れなくなることがあります。今回のそれは回鍋肉。ホイコーローであります。なぜなのかはわかりません。

思いつくとすれば、先月に先輩方と食事をした際に回鍋肉にするかどうかといった会話があり、その時からホイコーローウイルスが私の脳に入り込んだのでしょう。治すには現物の処方に限ります。

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ここ1ヶ月ほどは、ゆっくりと昼食を食べる機会がありませんでした。コンビニの駐車場でアメリカンドッグをコーヒーで流し込んだり、時にはピザまんを頬張ったり、または何も食べなかったり。

決して忙しすぎたというわけではないのですが、昼食に時間を割いて落ち着いてしまうことに何となく抵抗を感じたのかもしれません。やるべきことを中断させずにとっととやってしまえという意識。

しかし、このホイコーロー症候群だけはどうしようもありません。コンビニでは完治させることができないからです。よし、今日は食うぞ。目指すは定食屋か中華料理店。よし、あそこに行こう。ちょうど泉大沢のイオンに所用があることを思い出し、向かった先は1階にお店を構える唐庄酒家。

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イラシャイマセ。キマリマシタラ、ボタンデオヨビクダサイ。お冷を運んでくださったのは、おそらく日本のはるか西方の大陸から来られたと思われる中華美人。このお店には実にお似合いとも言えそうです。そんなことより、さっそくメニューを凝視する私。やっとの思いでありつけるホイコーロー。胃袋よ、もう少しの辛抱だ。さて・・と。ん?あれ?無い!ホイコーローが無い!ウソでしょ?マジ?グランドメニューには載っているものの、どこを探してもセットメニューに載っていません!

アンビリーバボー。ヤバい。泣きそうであります。今日は13日の金曜日。きっと悪魔のシワザなのか。もういい。スブタにしよう。ホイコーローもスブタも似たようなものだと自分に言い聞かせ、ボタンを押したのです。オキマリデスカ?また同じ中華美人が私のテーブルへ。あのぉ・・ホイコーローのセットは・・無いんですよね?思わず、最後の悪アガキともとれる言葉を発してしまう私。

そこに無いんだから、あるわけねーだろー!この、すっとこどっこい!という返答を予想していたわけですが、その中華美人は、母性にあふれた優しい笑顔で私の目を2秒間ほど見つめた後に、小さな声で予想外の言葉を発しました。タベタイデスカ?・・・。うん!甲高い声でそう叫びたかった気持ちを抑え込み、はい!食べたいんです。ワカリマシタ。キイテキマスノデ、オマチクダサイネ。

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13日の金曜日に、私は天使を見ました。あの時、私はよほど泣きそうな表情で哀願していたのかもしれませんが、それにしてもそれを察して臨機応変に「おもてなし」の心で対応してくださった彼女。

あの場面で「申し訳ありませんがホイコーローのセットはありません」と答えるほうが簡単なはず。現に、私は2番手にスブタを考えていたわけです。そして、驚くことに、会計伝票にはその酢豚が。

レジにもその彼女が立ってくださいました。今日は無理をきいてくださって本当にありがとうございました。とても美味しかったです。そうお礼を言うと、トンデモアリマセン!マタオコシクダサイ!

素晴らしい笑顔を見せる彼女は、私の心の中のスブタのことまで見透かしていた正真正銘の天使に違いありません。愛しのホイコーローで久々にゆったりした昼食。幸せに包まれた極上の時間でした。