焼肉奉行への道

焼肉。なんて素敵な響きでしょう。

肉そのものがあまり好きではない、という人はたまにいますが、「焼肉は絶対にキライだ!」と断言する人は、少なくともこれまで出会ったことがありません。

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考えてみると、「焼肉店」は基本的にセルフ調理システムが確立された業界で、おそらくこれが大きなポイントなのでしょう。食堂などで「生姜焼き定食」を頼んでみたら、生肉とフライパンとカセットコンロがテーブルに運ばれてきたという話しは聞きませんが、逆に、カリっと焼かれたカルビがお皿に盛られて出てくるという焼肉屋も聞いた事がなく、焼肉屋は「焼き」が命なのです。

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さて、一部のメニューを除いては、運ばれてきた生の肉を自分たちで好きなように焼き始めるわけですが、この「好きなように」というところで少々厄介な場面が出てくるのです。以前にも一緒に網を囲んだことのある友人や、家族同士の場合には問題がないのですが、特に初対面の人が含まれていたりすると、はたしてこの人は網を仕切る網元、すなわち「焼肉奉行」なのかどうかを見定める必要がでてくるのです。

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本来は、自分の好きな肉を自分で網に乗せ、好きな焼き加減で口に運ぶのが一番幸せだと思うのですが、複数人での焼肉の場合には、そうもいかないケースがでてきます。自分の分を焼いて食べてばかりじゃ勝手なヤツだと思われないだろうか。そう考えたりすると、今度は人の分まで肉を次々と網に乗せ始めます。周りは、あれ?これって、箸を伸ばしても良いのだろうか?と思い始めます。

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そのような混沌とし始めた状況のなかで、この肉だけは自分で好きなように焼いて食べたい、と網の端っこで人目を避けながら焼き始めます。裏返して、もう少しだな、うふふ・・ などと思っていたら、他の誰かからポイっとさらわれしまうことも、この世界では修行の一つだと理解しなければなりません。

また、最後の一切れで誰も箸を伸ばさずに、網の上で真っ黒こげになってしまう運命のカルビ。

たかが焼肉。されど焼肉。網を囲だ様々なドラマが繰り広げられるのです。焼肉を食べることに集中して楽しみたい場合には、少人数での開催が最適でしょうが、大勢で網を囲んで盛り上がることも時には魅力的です。その際には、やはり優秀な「焼肉奉行」。それも網の上の肉ばかりではなく、参加者の箸や目の動きにまで気を配る、「焼肉大老」が重宝されるのかもしれません。