宮城県美術館 ルノワール展

ゴッホと言えば龍角散。ルノアールと言えば喫茶店。古くから日本で言い伝えられている格言です。

といった具合に、周りからは基本的にすっとこどっこいなオヤジとして認められている私ですので、時には突拍子もないことに手を出すわけです。たしか以前にはこのようなことにも手を出しました。

あ!ゴッホ展!いつまでだっけ?うわうわうわ!15日までじゃ! 宮城県美術館で開催されている「ゴッホ展」。このところ少しだけパタ...

そして今回手を出したのは、宮城県美術館で先々週から開催されている「ルノワール展」。これだもの。なんでこれに手を出すかなぁ。なんでだろう。自分でもよくわかりません。普段から絵画などの美術系全般にはほとんど興味がないはずで、まさに「柄にもなく」という表現がぴったりなわけですが、前回のゴッホにしても今回のルノワールにしても、どうやら何かが自分を動かしたようです。

仙台城の二の丸跡地だったという宮城県美術館。仙台城址入口からも遠くないこのあたりは、地下鉄東西線の国際センター駅が出来たことで歩くことができる範囲となり、近隣の仙台市博物館や仙台第二高等学校、さらには東北大学川内キャンパスも含めて実にアカデミックなエリアとなっています。

その宮城県美術館で今月の14日から開催された「ルノワール展」。おそらく一生に一度の機会だと思い、これは鑑賞しておくべきだという結論に至ったようです。まさに「ゴッホ展」以来の来館です。

画面の隅々まで幸せな情感に満たされている作品が多いというルノワール。それは彼の「幸せそうな主題だけが幸せな絵画を生み出す」という確信があったからといわれているらしく、そのことが今でも多くの人に彼の作品が愛されている理由であろうとのこと。私のような凡人には少し難しい話しではありますが、確かにルノワールが描く人物画は非常に穏やかな表情ばかりで、鑑賞する側としても心が落ち着いて優しい気持ちになってくることは確か。心の栄養にはうってつけなのであります。

これまではどこかの銀行のカレンダーか何かでしか目にしたことがなかったルノワール。こうして原画を鑑賞する機会に恵まれると、その原寸大に驚かされることになります。特に「バレリーナ」と称される少女の油彩画はなんと142×94cm。目の前に立つと間違いなく私だけを見つめるわけです。

それともう一つ驚いたことは、この展覧会のために用意された54点におよぶルノワールの作品が、国内外から今まさに仙台へ集結しているという事実。この世界では当たり前なのかもしれませんが、例えば「バレリーナ」という作品はワシントンの美術館から、またニューヨークのメトロポリタン美術館、さらにスイスやドイツなど世界各地や国内の各美術館の所蔵品がここへ集められているのです。

係員の方にお聞きしたところ、今回の「ルノワール展」は国内の巡回展示ではなく、ここ宮城県美術館で開催するために国内外から集めた1回限りの組み合わせなのだそう。企画から開催にこぎつけるまでのご苦労や仕事量そしてそのコストなどを考えると、やはり相当に価値のあるものに思えます。

桜の便りも聞こえてきそうな4月16日まで開催されているという「ルノワール展」。春の日差しを受けながらこの界隈を散歩がてらにルノワールとふれあい、その後には美術館内に併設されているカフェモーツァルトで美味しいコーヒーをいただく。実に素晴らしい春プランではありませんか。私と同じようにすっとこどっこいな皆さんにも、この体験は十分に価値あるものとなるに違いありません。