今日の夕方近く。仙台市役所前でのことです。それぞれにキャリーバッグを携えたご年配のご夫婦が立ち止まっておられるのを目にしました。小さな紙を何度か回しながらご覧になり、顔を上げては周りを確認されています。明らかに、これから向かわれる目的地を探されているご様子なのです。
このような場合には、
1.見なかったことにする
2.声を掛けられたら対応する
3.声をお掛けする
おそらくこの3パターンが考えられるわけですが、自称「せんだいシティコンシェルジュ」の私としては、迷うことなく3番になるわけです。少し近寄ってから、どちらかをお探しですか?
今日のご夫婦からの質問は、国分町と一番町の交差点はどこですか?というものでした。むむむ。国分町通りと一番町通りは平行していますので、交差はしません。しかし、町としては隣り合わせ。
これはどういう意味なのでしょう。少し難しい質問です。国分町も一番町もあちらの方向ですが、どちらをお探しですか?スマイルホテルというところなのですが・・。
あら!スマイルホテルですね。それなら一番町通りですから、あそこの交差点を渡っていただいて、アーケードの右側を歩いて行かれますと右手にありますよ。ここからだと5分ちょっとでしょうか。あぁそうですかそうですか。どうもありがとうございます。いえいえ、お気をつけて。
3歩進んでから気になって振り返ると、まだ紙を回しながらモジモジされています。どうやら私の説明がヘタクソだったようです。イカン。よろしければ、そのホテルまでご案内いたしましょうか?えぇ?よろしいんですか?もちろんです。さぁ、参りましょうか。ここからはすぐですから。
先ほど青森県の八戸から仙台へ着いたばかりだというご夫婦は、明日から開催される「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」をご覧になるために来られたのだそうです。そうですか!どなたか、ご家族でも出演されるのですか?いえいえ、ただ好きでしてね、3回目なんです。
え?ジャズフェスをご覧になるために八戸からお泊りで?ええ。今日と明日と泊まって、明後日には帰ります。そうですか~。それはありがとうございます~。なんで一般人の私が御礼を述べるんだろうと思いながらも、このような方に出会えてなんだかとても嬉しかったのであります。
ホテルの空きが無くて大変でしたよ~。とご主人。奥様はニコニコされながら少し後ろを付いて来られます。そうでしたか~。でもよく確保されましたね。ええ、偶然にもスマイルホテルが空いていて助かりました。それは良かったですね~。あのホテルなら、ジャズフェスには最高の立地ですよ。
定禅寺通りを渡って一番町通りを3人で南に歩きながら、スマイルホテルって確か元ホテルユニバースだったよな?と自問自答。さも知ったかぶりしてご案内したら間違っていたではシャレになりません。ちょうどヤマト運輸のドライバーさんとすれ違ったので、すみません、スマイルホテルって元ホテルユニバースでしたよね?とお聞きすると、ええそうですよ、と。ホっ。
今日は夜に行く店が決まっているんです、とニコニコしながらご主人。え?どちらですか?オールディーズのお店なんです。へ~。かなり音楽がお好きなんですね~。ケントスで?そうですそうです。奥様も音楽がお好きなんですか?なんだか主人の影響でね~。実に穏やかで笑顔の絶えないご夫婦。あ、こちらがスマイルホテルです。では、お気をつけて。仙台をお楽しみください。
本当にありがとうございました~。すみませんでした。いえいえいえ、とんでもありません。私も明日から観に来ますので、街のどこかでお会いするかもしれませんね。そうですね~。
とても後味の良い出会いでした。おそらく定年退職後のご夫婦。なんと、八戸から仙台へのご旅行です。それも、明日から開催される「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」をお二人で楽しまれるために。どうやら天気は味方に付けたようですから、出演される皆さんもご覧になる皆さんも、大いに楽しまれることを願うのであります。明日からの2日間、仙台の街は音楽に包まれます。この期間だけは、「杜の都」に加えて「音楽の都」と呼ばせていただきましょう。