宮町 東洋軒

クルマで外回りなどをしていると、ふと目に付いた町の食堂がとても気になることがあります。

この扉を開けると、どんなミラクルワールドが待ち構えているのだろう。いったいどんな人が、どんな料理を作ってくださるのだろう。まったく予想もつかないこのワクワク感は、現代風の食事処に対して抱く期待感とは異質のものですが、こちらの方がはるかに興味深いのです。

青葉区宮町の商店街にお店を構える「東洋軒」。この前を通るたびに、いつかは入ってみたいと思っていた店です。ちょうどこの先の信号が赤になってふと顔を左へ向けると目に飛び込んでくる古ぼけた食堂。念願が叶い、本日にその赤いのれんをくぐることができました。

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お邪魔したのは13時半頃。ワクワクしながらお店へ入ると、少しかっぷくの良いおかあさんが1つのテーブルに陣取っています。おっ?先客か?と思ったら、いらっしゃいませ~と。

店内は4人がけのテーブルが4卓だけで、とても小じんまりしていますが実に良い雰囲気です。この昭和感は期待以上で、おかあさんの温和な表情も手伝って、すぐ和んでしまいます。

さて、何にしましょうか。本来であればラーメン1本勝負といきたいところですが、ランチタイムのサービスメニューらしき半チャーハンとラーメンのセットをいただくことに。

はいよ~。と言いながら厨房へ伝達したと思ったら、またすぐに出てこられてこちらを向いてちょこんと座るおかあさん。

ニコニコしながら見つめ合う、お店のおかあさんとその息子のような私。おそらく、コイツは一見さんだなぁ、と思われたのかもしれませんが、いつまでも見つめ合っていてもラチがあきませんので、いろいろとお話しを伺ってみることに。すると、おかあさんのお話しはなかなか止まりません。

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待望の半チャーハンとラーメンを運んできてくださったのは、今やおかあさんに代わって厨房で腕をふるうお嫁さんなのだそうです。さっそく箸を持つと、遠慮されたのか一時的に奥へ入られるおかあさん。空腹だったということをまったく抜きにしても、この昔ながらのラーメンは実に美味しく、また炒め具合が絶妙な半チャーハンも私にとって文句のつけようがありません。

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創業してから70~80年ぐらいかなぁと、またおかあさんは食べ終わった私の話し相手になってくださいます。名掛丁のお生まれだというおかあさんは、お聞きしてみるとやはり私たちの母親世代。おそらく、老舗も多いこの宮町界隈はおろか、仙台でも屈指の老舗食堂なのでしょう。

市内に何店舗かお店を構える他の「東洋軒」との関わりはお聞きしませんでしたが、このお店の温かさと懐かしさを感じれば、唯一無二の「宮町 東洋軒」と言えそうです。

20数年前、こちらの左隣りの東興商会さんに私が仕事上で大変お世話になったことをお話しすると、あら、なんだい!と。お隣のおかあさんもお元気で、今ではすっかり通院仲間なのだそうです。

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650円で老舗の味が堪能できる半チャーハンとラーメンのセット。ランチタイムのお得なメニューですっかり満足した上に、温和なおかあさんから昔の仙台のこともいろいろお聞きできました。

普通のレストランはランチタイムよりディナータイムの価格が高いわけですが、どうやらこのレストランはランチもディナーも同じセット価格。次回は是非とも優雅なディナータイムを。

店頭の最上部に掲げられた「東」の文字が歴史と風格を感じさせる「宮町 東洋軒」。末永く暖簾を守っていただき、おかあさんもご健康で過ごされますように願わずにはいられません。