中華料理 岳陽楼

若林区の南材木町にひっそりと佇む「中華料理 岳陽楼」。このあたりは仙台市内のなかでも完全な旧市街地で、近辺をみても「南鍛冶町」や「穀町」、また「畳屋丁」や「舟丁」、そして「南染師町」や「南石切町」など、実に風情を感じさせる町名が今も多く残っている地域です。

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以前、実は同じ若林区内の「保春院前丁」に何年か住んでいたことがあります。「保春院」とは出家後に呼ばれていた伊達政宗公の実母の名で、現在でも政宗公が建立したと言われる「保春院」という寺が若林区役所の向かいに存在することは、近隣問わずよく知られています。

保春院前丁に住んでいた頃からこの「岳陽楼」の存在は知っていたのですが、当時はあえてここで何かを食べようという気にはなれませんでした。しかし、この手の「食堂」がどんどん激減するなかで、私自身の価値観も少し変化してきたのかもしれません。今こそ、突撃です。

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先代が中国のご出身だったから付けられたという「岳陽楼」という店名。先代云々とはいえ、現在の店主ご夫妻もすでに70代でいらっしゃるそうで、最初は(今は無き)「三角公園」付近にお店を出されたそうです。その後に現在の「南材木町」に移ってこられて五十数年だとか。

「五十何年経ったが、忘れだどわ~」と大きく笑うお母さんが調理担当で、ご主人は大ホール及びデリバリーを担当されるようです。「んでもね、実はお父さんもちゃんと作れるんだよ。お父さんの味でねどダメだっつうお客さんもいっからね」と優しい配慮を見せるお母さん。

「昔はこの商売でも子供を3人育て上げたけど、時代も変わって今では到底無理な話しだよ」身体もしんどいし、出来ればあと1~2年やって終わりにしたいとの言葉には少し寂しさも・・。

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中華料理店なのに品数が20しかなくとも、たとえテーブルや椅子がヘナチョコで小さくとも、たとえ床がコンクリート丸出しでも、たとえコショウが何らかの空き瓶に入れられていたとしても、このお店の存在自体が「文化財」の対象だとすら思えてくるのです。おそらく、お互いに夫婦が支え合い、励まし合って歩んでこられた半世紀。お母さんの腕から繰り出されたタンメンは自家製麺とも相まって「燻し銀」の味。美味しいだけではない、何かを感じさせてくれるのです。