仙台ホテルの記憶

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昨年、オリックス不動産が仙台ホテルに続いて隣接するGSビル(旧:日の出ビル)を買収したことによって様々な憶測が飛び交っていましたが、とうとう仙台ホテルが本年末で営業を終了する旨をオフィシャルで発表したことは、私たち仙台人には少なからずショックなニュースです。報道では、この一画すべてを一体的な再開発の方向で検討が始まっているとのことなのです。

数年前、創業家が守り抜いてきた「仙台ホテル」及び「伯養軒」の経営が決して順調ではないというニュースを聞いた時には、商売の難しさをつくづく感じたわけですが、まさか「仙台ホテル」という施設自体が無くなってしまうとは考えも及ばなかっただけに、非常に残念でなりません。

「仙台ホテル」は、1850年に国分町で創業した「旅籠 大泉屋」が、1896年仙台駅前に2階建ての和洋折衷建築で東北初の洋式ホテルとして開業した「仙臺ホテル」が始まりだそうで、実に100年を優に超える間、仙台駅前の「顔」としていつも私たちの前に建ち続けてくれました。

この「仙台ホテル」が、これまで地元に及ぼした良い影響は計り知れないのだろうと思います。かつて5階にあった「フォンテーヌ・ブロー」というフレンチレストランは、仙台のフレンチ界でも老舗と言われる名門的存在だったようですし、地下の中華料理やカレーに舌鼓を打った往年のファンの方も多かったのではないでしょうか。

また、ホテルとしてのサービスにも定評があったようで、現に東京に住む私の知人などは、仙台出張の際には数あるホテルの中から必ず仙台ホテルを指名して訪れていましたし、私も会合などで今年になっても何度か利用したばかりです。

「仙台ホテル」という非常に理解しやすいシンプルな名前。建物の屋上前面に大きく掲げる「SENDAI HOTEL」のサイン。SとHを模したトレードマークと、筆記体で書かれたロゴ。どれも私たちにはなじみの深いものばかりですが、それらが無くなるとは想像ができません。おそらく、私などよりももっと諸先輩の皆さまの中には多くの「仙台ホテル」ファンがいらっしゃることでしょうし、またここで様々な思い出を残された方も決して少なくないのだろうと思います。

100年の歴史に幕を閉じようとしている「仙台ホテル」。多くの人がここで働き、多くの人がここで眠りにつき、また多くの人がここで食事を楽しんだのです。この、駅前の名門ホテルで。数年後、このホテルが同じ名前で私たちの前に姿を現してくれることを願ってやみません。