チューリップ 青春の影

「青春の影」。これまでの生涯で、間違いなくベスト3に入れなければならない曲です。

1974年に発売された「TAKE OFF」というチューリップのアルバムに入っていたこの曲を、当時中学生だった私は何百回聴いたのか憶えていませんが、おかげで歌詞は今も記憶しています。

「チューリップ」か「オフコース」かファンが二分された当時、私は偶然にも最初にこのアルバムを買ってしまったせいで、チューリップの熱心なファンになってしまったのです。それからは、その前の曲を聴いたりその後の曲を聴き続けたのは言うまでもありません。

チューリップの中でほとんどの楽曲を作っていたのが財津和夫氏で、彼は「心の旅」や「サボテンの花」など多くの名曲を生み出しました。特に「サボテンの花」は1975年に発売されたシングルですが、1993年にフジテレビ系で放映された大ヒットドラマ「ひとつ屋根の下」の主題歌としてリバイバルヒットし、非常に多くの方が耳にされたのは今でも記憶に残るところです。

主人公である江口洋介扮する「あんちゃん」が発する名セリフ、「そこに愛はあるのかい? 」は当時の流行語ともなりましたし、福山雅治扮する「ちぃ兄ちゃん」や酒井法子扮する「小雪」などなどキャスティングも絶妙で、私自身もハマって毎回かかさず観ていたのを憶えています。

take off

音楽というものは不思議なもので、熱心に聴いた曲であればあるほど、その曲ごとに聴いた頃の「情景」や「匂い」がよみがえってくることがあります。この「青春の影」からは、学生服や当時過ごしていた自分の部屋、針を落としたターンテーブルやステレオ、よく読んでいた本や家族の様子などが色付きで想い出されるのです。音楽は追憶のスイッチなのかもしれません。

チューリップはこのアルバムで文字通り音楽界へ「離陸」を果たしたのですが、なかなか大人へ離陸できなかった頃に聴いたこの「青春の影」を、私は一生忘れることができないでしょう。