妖艶な女性から「街や自然を美しく ♪」と言われたら、「もちろん!今すぐに!」などとわけの分からない返事をしてしまいそうですが、これはとあるガソリンスタンドで用意されたマッチのパッケージ。昔は町に何軒か灯油などを扱う「燃料屋さん」などと呼ばれた個人商店もあったわけですが、考えてみれば油脂類にマッチとは少々危ない組み合わせ。とは言え、石油ストーブにマッチは必需品。
「昭和のマッチ館」シリーズの第8弾。今回は小型のマッチを集めてみました。ちょうど普通のマッチの大きさの3分の2ほどでしょうか。昔はこの小型タイプのマッチも少なくなかったように記憶しています。中に入れられたマッチ棒の数は、箱の厚みによって10本から15本前後。通常は25本程度が多いようですので、小型マッチで1箱のタバコを吸うには火がちょっと足りないということです。
番外編として、小型のマッチではありませんがこれまで目にしたことのないものをいくつか。青根温泉の「岡崎旅館」、遠刈田温泉の「大小室旅館」、そして青根温泉の「丹野七兵衛本店」のマッチ。
これら旅館のマッチは比較的古いものらしく、外箱はすべて木の折箱方式となっています。「岡崎旅館」は有名な老舗旅館ですが、遠刈田の「大小室旅館」とは初めてお目に掛かります。大小の客室が用意されているから「大小室」なのか、あるいは「おおこむろ」なのか、見当も付きません。ネット上にも「大小室旅館」に関する情報は見当たらず、機会があれば現地でお聞きしてみましょう。
そして驚いたのが「丹野七兵衛本店」と記載されたマッチ。どうやら青根温泉の「青嶺閣」らしく、少し調べてみたところ、以前は「丹野七兵衛旅館」という屋号だったようです。しかもマッチでは初めて目にする右から左への横書き。縦書き自体が右から左へ書き進む影響で、戦前まで日本で用いられたという右横書き。となれば、このマッチは推定で70年ほど前のものと言えそうです。
作りは実にしっかり。外箱はもちろん木製で、実は中箱も薄い木に紙を貼り付けたもの。これは正真正銘の折箱製マッチとも言える逸品で、おそらく丹野七兵衛氏のこだわりなのでしょうか。想像以上にコストが掛けられたと思われる当時のマッチ。その灯火もさぞかし貴重だったのかもしれません。