仙台秋保 渡辺食堂

地域の人たちに愛される町の食堂。そこで出される何かが美味しいとか美味しくないといったことよりも、家族経営の食堂が持つ温かさや、これまでの歩み、またその地元での存在意義などを想像しながらいただく一品がまた格別なのです。お店からすれば、私などは単なる通りすがりの客。しかし、私からすれば記憶に永く残るのは、こういった町の食堂ばかりなのです。

秋保の温泉地区を通り過ぎてさらに大滝方面へしばらく走ると、途中から右折して国道48号線に抜ける道路があります。そのルートを頭で描きながら、ちょうど秋保付近を西へ走っていた時のこと。昼食はまだ済ませていません。どこか、気の利いた町の食堂はないものか。

秋保温泉という場所柄、観光地価格の食事処はいくつかありそうですが、今回は観光ではないので町の食堂で十分です。しかし思い当たる店も無く、これはやはり48号線に出てから探そうかと右折する交差点が見えてきたところ、あれれ?今の?なんとなく食堂ののれんっぽくない?

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いったん通り過ぎたのですが、気になってUターンして確かめてみることに。ん?食堂?そのようです。いや、間違いなく食堂でしょう。だって、「渡辺食堂」と書いてありますから。

わぉ!久々に見るディープな町の食堂です。これは血が騒ぎます。開け放たれた入り口のサッシは少しだけ傾きかけており、その脇にある窓には網戸が。この様子では、十中八九エアコンが装備されていないお店だということは明らかです。どうすんのよ?自分。もちろん入るっちゃ。

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絶妙なローカル感。実に良い雰囲気です。などと書くと、これを鵜呑みにされて実際に行かれた方からはバカヤロー!と言われそうですが、私が定義する町の食堂はまさにコレなのであります。

先客は、郵便配達の職員さんや、おそらく近くで作業をされている鳶職の方々も。店内は4人掛けのテーブルが3卓と8人分の小上がり。店の脇に停められた出前用のクルマは出動体制。

献立は実に豊富です。最初なので「中華そば」といきたいところでしたが、壁掛け扇風機がフル回転する店内の温度はおそらく30℃前後。つまりは外気温とほぼ同等ということで、今回は中華そばを断念してチャーハンを。食べている間にも、次々と来店客が入れ替わります。

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職人さんが召し上がっていた野菜炒め定食の盛り付け具合のスゴいこと。と思っていたら、私のチャーハンも他店の大盛り分はありそうな感じでした。おそらく、この近辺では唯一の食堂なのでしょう。この日の来店客のなかで、私以外は皆さんがリピーターのご様子でした。

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おそらく50年ぐらいかなぁ。おかみさんがそうおっしゃる「渡辺食堂」。食べ終えてお店を飛び出すと、すぐに道路で実に危険な「渡辺食堂」。店内だけではなく、裏には特別なテラス席まで用意される「渡辺食堂」。自然なヌルい風が心地良い「渡辺食堂」。この地に根ざして数十年。まさに地域の人たちや固定客の皆さんから愛される、唯一無二な存在のようです。