ホット メニュー

昨年のことになりますが、たまたま実家へ帰った時のことでした。

父親が一冊のスクラップブックを私に差し出しました。ほら、これ。

え?何これ?ええ?うそ!ううぅ・・。言葉が出ません。

高校時代から数年間、学業そっちのけで精を出していたバンド活動。働く両親は一生懸命に学費を捻出し、その子どもは勉強もせずバンドに夢中。日本一のバカ息子だったに違いありませんが、そのバカ息子が歩んだアマチュアバンドの記録を、父が密かに収集して保管していたようです。

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男子高校の2年生だったある日、ラグビー部に在籍していた私はサッカー部の同級生だった男からバンドに誘われたのです。当時、その高校はグラウンドがとても狭く、様々な部活が入り乱れて練習をしていました。君、ピアノを弾くんだって?え?あ、あぁ、少しだけなら弾けるかも。

一緒に音楽部へ移ってバンドをやろう。サッカー部の次期キャプテンと目されていた彼が、真顔で私に言うのです。彼と違って冗談半分でラグビーをやっていた私は、うん、分かった、と二つ返事。

ギタリストだった彼と一緒に別の同級生へドラムをお願いし、さてベースはどうしようかと。懸命に校舎内で調査を重ね、一学年下の後輩を学食でヘッドハンティングしたのでした。

確か「よい子つよい子げんきな子 ホットサウンド ホットメニュー」がキャッチフレーズで、バンドの名前は、サディスティック・ミカ・バンドのアルバムタイトルから拝借した「ホットメニュー」。

リーダーでもあり、ギターとボーカルを担当していたサッカー部出身の彼は、元々エリック・クラプトンに傾倒していました。その彼の影響で我々は徐々にブルースを演るようになり、最終的にはコミックブルースバンドのスタイルになっていったようです。演じる側が楽しくなければ、きっと観ている側も楽しくないにきまっている。おそらく、それがポリシーだったのでしょう。

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スクラップブックをパラパラとめくりながら、次々と思い出される当時の情景。いかにも若輩者だった我々だけではなく、当時の仙台における音楽シーンをリードされていた実に懐かしい先輩方の顔ぶれもよみがえってきます。今思えば、無礼でワンパクな我々は、非常に多くの方々に支えられながらバンド活動を謳歌していたのです。幸せな青春時代に感謝しなければなりません。

30年の月日が過ぎて、なぜ今頃になって父はこれを出してきたのでしょう。それを聞いてみたところ、たまたま見つけたからだと。当時の思い出の品が何一つ残っていない私にとっては、父がスクラップしていたこのノートが実に恥ずかしいバカ息子の証明となりそうですが、いくらバカ息子でも親からすれば子どもは子どもなのでしょう。それを考えると胸が苦しくなりそうです。

「DO YOU LOVE ME」も「SOMETHING YOU GOT」も、当時の我々が大得意とする楽曲でした。いつかは機会があればまた演りたいとも思うのですが、バカ息子に残されている課題も忘れるわけにはいきません。一生かかっても恩返ししきれないほどの、親孝行という課題も。