ファミレスのうちわ

先日のことです。古い友人と久々に昼食を食べる機会があり、待ち合わせをしたファミリーレストラン。席に案内されるとメニュー立てのところに2セットの「うちわ」が備えてありました。実はこの光景を目にしたのは今回が初めてではありません。今年の夏はファミレスなどいたるところに手動送風具とも言える「うちわ」が備えてあり、皆さんがパタパタしています。

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その時は11時半頃でしたので、まだ人の入りは3割ほどで、外の猛暑と比べて店内はシアワセな涼感空間。ところが、昼を過ぎて徐々に満席状態へと近づくにつれ、店内も少しずつ暑くなってくるわけです。昨年であれば間違いなく「すみませ~ん。少し暑いので、温度を下げてもらえませんか~」と、どこかから声が飛ぶはずなのですが、今年はそれがありません。

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他の飲食店で昼食を食べた際にも、待っている間には「うちわ」や自前の「扇子」でパタパタと、食べてい間は汗を拭き拭き黙々と箸を動かす、といった皆さんの姿を多く目にしました。

さすがに今年ばかりは誰も文句を言いません。企業も店舗も節電に取り組んでいることを知っているからです。「エアコンの設定温度は『28℃』が望ましい」とあれほど口すっぱく言われれば、あぁ、おそらくここのエアコンも28℃に設定してあるのだろうと納得するのです。

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しかし、よく考えてみると設定温度と実際の店舗内温度が違うのは明らかです。温度計を持ち歩いているわけではありませんので確かなことは言えませんが、設定温度とはあくまでもエアコンに設定する温度のことで、実際には人の出入りで店舗内の温度は大きく変化しそうです。次々と出される料理自体の熱や、ドリンクバーに集う人の動きによる運動熱など。

もちろん、エアコンの設定温度を高くすることで消費電力が少なくなることは間違いありません。そして、今年の夏はそれが節電に繋がるのでしょう。しかし、飲食店などのようなところは、何かもう少し工夫が必要なのではないだろうかと思わざるを得ません。その工夫が、今年あちこちで見られる「うちわ」ということなのでしょうが、何となく他人まかせな感じ。

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以前にハンバーグを中心としたファミレスで見かけた光景ですが、店内は鉄板で出される料理の多さも影響してか、もはや熱気ムンムンなのです。食べながらも汗がじんわり吹き出してくるくらいの店内温度は、おそらく30℃を超していたのではないでしょうか。隣に座っていたサラリーマン風の二人組は、そそくさと食べ終えてすぐ会計を済ませ、逃げるようにクルマへと。

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来店客の無い内勤事務所などはともかく、お客様を招き入れるのが仕事の店舗などでは、店内に温度計を設置して気を配っていただくか、せめて来店客の出入りによる時間帯でエアコンの設定温度を変えても良いのではないかと思うのです。もちろん節電が今年の私たちに課せられた使命であることは分かっていますが、心地良い空間もまた、必要なのであります。

空調もセルフサービスである今年の夏。自分で扇ぐ「うちわ」の風も涼しいものですが、両手を駆使して食べている間は、お店の綺麗なお姉さんが風を送ってくれるわけではありません。この状況では、特に小さなお子様連れのママさんがゆっくり食事を楽しむのは難しそうです。サービス業の根幹に関わる心地良い涼風空間を、なんとか維持していただきたいところです。