八十をとうに過ぎた実家の父は再び青春時代を謳歌しているのか、JRの「青春18きっぷ」を利用してあちこち出掛けているようです。つい最近も気仙沼に行ってきたとのことで、お土産に買ってきたイカを少し分けたいので、取りに来ないかというのです。いつも申し訳ありません。
そのうち時間がある時にでも取りに行きますからと答えたところ、塩うにも買ってきたから早いほうがいいぞと。え?塩うにっ?!あららら、なんでしょう。さっそく今日行きますから!
約束の時間よりも少し早く着いてしまったので、これは久しぶりに地元の食堂で昼飯でもと思い、思い切って突撃したのが実家からほど近い、伝説的な食堂となった「松風食堂」であります。
昭和32年創業だそうですから、今年で53年を迎える「松風食堂」。現店主は旧制中学校卒業後、現在のNHKから届いた採用通知を蹴って、母が開店させたこの食堂を継いだそうです。
私が子どもの頃は、お店でも出前でも食べた記憶があり、おかもち片手に自転車でさっそうと駆け回る姿は、小さなこの町では知らない人はいないほどの、名物おじさん的な存在だったのです。
いつの頃からか、この松風食堂にはたくさんのファンが出来たようです。食堂のファンと言うよりも、もちろん店主のファンなのでしょう。ある意味、とても個性的な店主なのですが、この小さな食堂を延々と今日まで続けてこられたことに対しての尊敬は誰しもが疑い無いところです。
昔に比べればさすがにお歳を召されたようですが、昭和5年のお生まれと聞けば十分お元気そうで嬉しくなってしまいます。実に久しぶりだったにもかかわらず、「あれ?どこどこの息子さん?」と言われたのには本当に驚きました。おんちゃん、スゴい。それからは「〇〇君!」と君呼ばわりです。
おそらく、どこの町にもこのような食堂があるのかもしれませんが、ワンオーナーで53年という偉業、そして生涯を小さな食堂に捧げる人生。何かこみ上げてくるものを感じてしまいます。
ここを訪れたことのある誰しもが、このお店が閉まることなど想像できないでいるのですが、食堂の存続うんぬんよりも、店主の末永いご健康を願って止まないのであります。いつまでもお元気で。