トイレの貼り紙

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ここ十年前ぐらいからでしょうか、トイレによく貼ってある注意喚起の文言が、少し穏やかな言い回しになっていることに気付かされます。その昔は遠慮なく「汚さないでください!」とか「一歩前へ!」などと、どちらかと言うと上からの物言いだったのですが、ここ最近は実に丁寧です。

確かに、そのお店を利用する客としてトイレを拝借した際に「汚さないでください!」と言われても、「文化遺産じゃあるまいし、そんなこと知るかよ!」と反発されてしまう場合もあるのかもしれません。「汚さないでください!」の裏には「私たちも掃除するのが大変なのよ!」の意味が。

しかし、最近よく貼ってある「いつもきれいにご使用いただき・・」の文言は、たいていの場合には用を足す前に目に留まるわけですから、「いやいや、今日が初めてなんだけど・・」と思いながらも、「そこまで言うのであれば・・」などと少し慎重にきれいに使おうとするから不思議なのです。

おそらくこれは、コンビニチェーンのどこかが最初にやりだした事だと思われますが、最近では様々な形態のお店や施設へ伝染しているようです。結果的に同じ事を伝える言い回しとして効果の程はわかりませんが、少なくとも私たちのお店へ対する印象は違うのだろうと思います。

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もう一つ、たまに見るのが「トイレ清掃チェックシート」です。わざわざ私たちが目にするところへ貼ってある場合が多いのですが、考えてみればこの状況も面白いもので、たとえ少し汚れているケースがあっても、「いやいや、ちゃんと3時間おきに清掃してますから」とか、「次の清掃時間までの間に汚れてしまったのでしょう」といった言い訳用に設置してあると見られなくもありません。でなければ、私たちの目に入らない清掃用具室内に置いておけばいいはずです。

チェックシートがあっても汚れているお店はありますし、逆にそのようなものが一切見られないお店やホテルなどでは、なぜか常にキレイな状態だったり。要は、利用客数に比例した清掃頻度の問題なのでしょう。

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トイレの貼り紙のように、同じことを伝える場合でもチョッとした言い回しを変えるだけで穏やかに感じるケースは、意外に私たちの日常の中でも使えることなのかもしれません。

「当店ご利用以外の方は駐車禁止!」と書きたいところを「当店ご利用者専用駐車場」でも意味は十分通じますし、「メンバー以外の方はご利用できません」を「メンバーの方に限りご利用いただけます」でも同じ意味です。この観点でみてみると、街中でも様々な発見がありそうです。