ウジエスーパーのソコヂカラ

大震災の直後から、たとえパニックの中においても冷静な人たちの温かくも勇気ある行動を、私たちは数多く目にしてきました。大震災の当日、停電によって信号が遮断された多くの交差点でも、私たちはそれぞれ譲り合いながら、事故を起こすことなく帰途に付いたのであります。その後信号の遮断は数日続きましたが、クラクションの音を耳にすることは一度もありませんでした。

あの夜に驚いたのが、自宅近くの比較的大きい交差点です。株式会社JOMOネットで運営するガソリンスタンドである「Value5 中山店」のスタッフらしき人たちが数人で、信号代わりの交通整理をしていたのであります。おそらく、停電でスタンド業務がストップしたとはいえ、小雪ちらつく寒空の下で懸命に渋滞の交差点をさばくその姿は、今でも忘れられないのです。

温かくも勇気ある人たちに加えて、私たちは様々な店舗や企業の姿勢も目にすることになりました。もちろん、かなりの震度に襲われたそれぞれの店内は相当の被害があったものと推察されますが、すぐに店頭で販売を始めた店舗や、なかなか開かなかった店。懐中電灯の乾電池欲しさに何度も訪れた家電量販店が開いたのは、電気が復旧してからだったのです。

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登米市の迫町佐沼に本社を置く「ウジエスーパー」。ウチのすぐ近所にもオープンしたのは7~8年前でしょうか。比較的近いところにジャスコや生協、ヨークベニマルなどが構える激戦区にもかかわらず、特にチラシの入った日には大勢の買い物客が訪れ、駐車場に入るクルマが道路に並ぶ様を私たちは「ウジエ渋滞」と呼んでいます。今回はそのソコヂカラを見ることに。

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近所のウジエスーパーが震災後に店頭で販売を始めるまで、数日もかかりませんでした。もちろん商品や販売数は限られていましたが、同じ被災者でもある店舗の対応に、私たちは連日長蛇の列を作ったのです。私は直接その機会には立ち会えませんでしたが、長町店などでは消費期限間近あるいは期限切れの日配食品を、捨てるくらいならと無料で配ったそうです。

震災後の市内中心部では、2個のおにぎりを500円で売る勇者も目にしましたが、どの商売においても、売上が停止して死活問題であることはまったく同じであります。その中で、それぞれの企業や商売人が取る行動を、私たちは静かに見ながら様々なことを感じているのでしょう。

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今日のウジエスーパーは、ほとんど震災後を感じさせない品揃えでした。魚類や精肉、牛乳やチーズ、また冷凍食品に至るまで、いったいどこからどうやって仕入れてくるのだろうと思わざるを得ません。おそらく、通常よりも輸送コストははるかに掛かっているのかもしれませんが、見る限りにおいては震災前と販売価格は変わりません。それがウジエスーパーのソコヂカラ。

くしくも、震災直前である3月10日の夜に、ウジエスーパーで少し奮発して購入した本マグロの刺身。カミさんとは、あの最後の晩餐は本当に美味しかったなぁと事あるごとに話しをしていたわけですが、今日はそのことを思い出しながら、久々の刺身を口にできたのであります。

今や数少ない宮城県生まれのローカルスーパーチェーンである「ウジエスーパー」。まるで、宮城県民の命は我々が守る、という心の声さえ聞こえてきそうな姿勢に、感服するのです。