仙台駅方面からイービーンズ、ホテルモントレ仙台の前を南へ歩き、現在「伊達の牛たん本舗」がある角を右折すると「北目町通り」ですが、右折してすぐのワンブロック角に「仙台セントラルビル」というビルがありました。当時の言い方で言えば、「鉄道管理局の向い側」。現在は駐車場になってしまったそのビルは間口が狭い細長い建物で、確か1階に画材屋さんがあったでしょうか。そして2階には麻雀荘もあったわけです。
「雀荘セントラル」という店名のその麻雀荘は、気仙沼出身のご夫妻が経営していたところで、アルバイトはなぜか歴代東北学院大学の学生が務めるというオキテがあったのです。そしてひょんなことから、就職活動に立ち向かわなければならない先輩方に代わって、私にここのアルバイトの話しが舞い込んだというのが、ちょうど今から30年ほど前。合計23卓の大型雀荘でした。
このあたりは仙台市内でも有数のオフィス街で、当時雀荘に来られたお客様も名だたる一流企業の皆さまばかり。私はここでお茶やおしぼりのサービス、また出前の手配や後片付け、そして雀卓や麻雀パイの掃除に至るまで、週に3、4日のアルバイトにいそしんでいたのであります。
開店は夕方の5時ぐらいでしたので、意外と忙しいのが出前の手配。焼そばは同じビルの同階にあったスナックから。寿司は当時ホテルサンルート仙台の地下にあった「末廣寿司」から。そして、そばやうどん、カツ重などは、同じ北目町通の七郷屋からそれぞれお願いしていたのです。
お店は23時までの営業でしたので、アルバイトの私たちも仕事の合間に出前で食事をとるわけですが、個人的なお気に入りは七郷屋のカツ重で、これはいったい何度食べたかわかりません。このカツ重を食べることが楽しみで、バイトに精を出していたと言っても良いほどです。
数十年ぶりに訪れた「七郷屋」。残念ながらメニューのどこを探しても「カツ重」の文字は見当たりませんでした。雀荘セントラルが消えたと同様に、あのカツ重もいつの間にか姿を消してしまったのでしょうか。現在は美味しい焼き魚を出してくれるお店としても知られていますが、やはりどうしても「そば」を注文してしまうのです。当時雀荘に来られたお客様のように。
昭和26年の創業だという「七郷屋」。お店の雰囲気や商売に対する姿勢は何一つ変わっておらず、ご主人含めて4名の店員さん同士は、来店客の前で無駄口一つ叩きません。そして本日いただいた、実に美味しい熱々の肉そばに乗せられた刻み海苔だけは、あの時のカツ重に乗せられたものとまったく同じ味に感じたのは、何も気のせいだけではなさそうです。