南光台6丁目 中華王将

中華 王将。店名だけ聞けば間違いなさそうな感じですが、店頭を見れば間違いなくビビってしまいます。怪しげな雰囲気の食堂は以前から好きだったのですが、最近ではどうもいくじなし気味。

ここ「王将」も、これまで何度か突撃しようと試みましたが、直前で中止に追い込まれていました。

常に開け放たれている入り口。どこからどう見ても、「餃子の王将」や「大阪王将」ではなさそう。

なにせ、いつ覗いても人っ子ひとりいません。もしかして、お店の人もいないんじゃないの?ここ。

4回目の訪問だったでしょうか。いよいよ突撃命令が出ました。行け!自分。例によって、この日も誰もいません。そうか、ここはセルフサービスの食堂なのだ。自販機にお金を入れると具材一式が出てきて、あとは厨房に入って自分で調理する。な~んだ、そうか、そうだったのか。ははは・・。

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いらっしゃい。

お店に入ると、人の声がしました。見ると、小柄なじいちゃんです。あ・・いいですか?はい、いらっしゃい。厨房の中で丸椅子に座りながら新聞を読んでおられたじいちゃんは、横縞のポロシャツの上から汚れたかっぽう着をゆっくりと羽織り始め、私の奇襲突撃を受けて立つ構えのようです。

店内に火の気はまったく感じられず、おそらく麺を茹でるはずの鍋は、雨上がりの水たまりのようになっています。よしよし。実にディープで良い雰囲気ですが、人によってはこの状況を相当にヤバいと感じるかもしれません。いやいや大丈夫。少しワクワクしてきました。このじいちゃんは、おそらくこの道の鉄人に違いありません。ではさっそく注文を。と上部に貼り出された献立を見ると、350円のラーメンを筆頭にどれもこれも安い!うむむ・・迷うところですが、450円の野菜炒め定食を。

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手際は良いものの、比較的ゆっくりとしたリズムで繰り出される鉄人の野菜炒め。さっそく熱々に箸を伸ばすと、絶妙な炒め具合と塩加減です。お聞きすれば、なんと今年で85歳を迎えられるというご主人。まさに私の父親世代であり、「じいちゃん」とは失礼千万。この道に入られてから最初に上杉で独立されて26年。ここ南光台に移られてからは27年だそう。実に半世紀以上も鉄鍋を振り続けてこられたじいちゃん。いや、鉄人。お一人でどれだけの胃袋を満たしてこられたのでしょう。

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南光台6丁目の一角に佇む「中華 王将」。たまに、チェーン店すか?と聞かれるんだぁ、と優しい笑みを浮かべるご主人。んなわけないでしょうよ、と思いながら店名の由来を伺うと、独立当時に流行った村田英雄氏の「王将」からいただいたのだと。なるほど。妙に納得できるお話しであります。

自宅兼店舗だからこの価格で大丈夫とおっしゃる王将。現役の黒電話をお店に置かれている王将。堂々とインスタントのみそ汁をお使いになる王将。実は今年いっぱいで店をやめようと思って。少し寂しそうにおっしゃる中華王将の鉄人は、自身が描かれた王将位へと到達されたのかもしれません。