えほんのせかい ほるぷ世界の絵本

「世界で最も貧しい大統領」と呼ばれたウルグアイ元大統領。今月の初旬に任期を終え、惜しまれつつ退任されたホセ・ムヒカ元大統領のことは、今年に入ってからもテレビなどで大きく取り上げられました。公式の場でスピーチされる際には鋭い眼力をお見せになる一方で、ふだんは実に優しいおじいちゃんの目。「目は口ほどにものをいう」という言葉があるように、あの目は非常に魅力的です。

そんな大統領を描いた絵本。「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」に人気が出て、出版社では増刷に入っているという話しを聞き、そういえば私にも絵本の在庫があったことを思い出しました。

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30年ほど前。社会人1年生だった私は、飛び込み営業先の会社で1件の契約をいただいたのです。

やれやれ。すると、間髪を入れずに今度は先方から営業されました。目の前に出されたパンフレットには「えほんのせかい」とあります。後で思えばバーターということですが、当時の私は丁重にお断りする術も知らず、またその絵本も魅力的に感じたのか、まんまと契約を結んでしまったのです。

やがて自宅に届いたのは、2箱のダンボール。世界の絵本集2セットでした。どうすんのよ、これ。

とりあえず開けてみたわけですが、世界各国の絵本には文字通り世界各国の言語が書かれています。しかし絵はとても綺麗。まだ独身だったこともあって、いずれ結婚して子どもが出来たら見せてみようか。そんな気持ちでまたダンボールにしまい込んだのでしょう。あれから早30年の歳月が。

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残念ながら子宝に恵まれなかった我が家でしたが、この絵本セットは引っ越しのたび私のところについて回りました。今の住まいでは押入れの奥底に入れられて15年。頭の片隅では気になっていた世界の絵本数十冊。このまま私の手元に残しておいても、いずれ棺桶に入れるには少し多過ぎます。

ブックオフで売り払うか、それとも図書館に寄付するか。いずれにせよ、どちらも事務的な対応で終わりそう。しかし、私などが持ち続けているより価値を感じる誰かにこの絵本を見ていただきたい。

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そして本日、面識のある絵本屋さんにすべて寄贈しました。これまでカビ臭くて暗い場所に閉じ込められていた絵本たちは、30年を経てやっと日の目を見ることになったのです。とても狭いその絵本屋さんにとっては迷惑な話しだったのかもしれませんが、私としてはプロの手に委ねるのが最良の方法だろうと思ったことと、店主であるおばあちゃんの目が、あの大統領の目と同じだったからです。