ターボでダーン! ステラのインプレッション

人生初の軽自動車で、人生初のターボ車となったくろまめ号。「過給器」ということで言えば、その昔に日本フォードのテルスターワゴンPWS(プレッシャーウェーブ・スーパーチャージャー)付きディーゼルを所有していたことがありました。カペラカーゴワゴンのOEM車で、製造元はマツダです。

アクセルを踏み込むとヒュイ~ンという音がして、そう軽くもないディーゼルのステーションワゴンを不足なく押し出すトルクを発揮したものです。当時は軽油が確か70円前後だったこともあって、首都圏から仙台へ往復したとしても軽油代は3千円台。今思えば貴重なメカニズムだったようです。

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出来ることならやめてもらいたかった、くろまめ号のボンネット前面に施されたエアインテーク。ここだけが唯一、ターボ車とNA車の違いとなるようです。こんな穴ぼこホントに必要?ダミーじゃないの?と思って確認してみると、ボンネットの内側にはインテークから繋がるダクトが備えられ、それがインタークーラーの空気取入れ口に直結するような仕組み。どうやら必要な装備なのでしょう。

そのこともあってか、否が応でも期待してしまうターボの威力。しかし、納車の当日に肩透かしを食らったことは今でもはっきり憶えています。ターボでダーン!とはならなかったからです。あれ?このクルマだけメーカーのミスでターボを装着し忘れたか?ほとんど感じられなかったターボの存在。

しかしながら、発進加速時や上り坂でも、エンジンの回転数は3,000rpm以上を使う必要はなく、アクセルをあまり踏み込んでいないことに気が付きます。なるほど。これがターボによるトルク補填なのかもしれません。つまり、ターボでダーン!というよりも、ターボでモリモリという感じです。その結果、試乗した他車よりも優れた静粛性を感じた部分に、いっそうの優位性が保たれています。

いつの頃からか、本格四駆に対して生活四駆という言葉が聞かれるようになりました。それに例えて表現するならば、くろまめ号のターボも本格ターボではなく生活ターボと言えるのかもしれません。660ccという小排気量ゆえの小トルクを補う役割。それは意外にも十分過ぎるほどの効果を発揮し、特に無段変速機であるCVTとの相性も、現時点では決して悪くなさそうに感じるのであります。

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前車にも増してフル装備ぶりとなったくろまめ号。ワイパーだけは即時に交換するつもりで用意していましたが、まったく想定していなかったのが純正スピーカーの音でした。昔によく聴いたAMラジオのような音。これまでクルマのスピーカーを交換することなど考えも及ばず、おそらく不満に感じたことはなかったのでしょうが、今回ばかりはどうしても我慢ならず。交換した効果は歴然でした。

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燃費に関しては初回の満タン法で16.8km/L、2回目ではなんと19.6km/L。これには驚きました。2回目の走行距離(473.7km)のうち、1日で140kmを走った日がありましたが、それ以外は仙台市内をちょこまかと乗っている値です。カタログ値が25.2km/Lとなっているので、おそらく市街地ばかりの走行で15km/L前後、長距離でも18km/Lほど走れば上出来だと思っていたわけです。

これにはもちろんアイドリングストップも功を奏しているのでしょうが、必要十分なトルクのおかげで、あまりアクセルを踏み込まずに済んでいることも大きな要因でしょう。30Lのガソリンタンクで優に500km以上を力不足なく走ることができるのは、軽自動車として足の長い部類と言えそうです。

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乗り心地は少し固めでミッシリとした感じ。深い段差などでは跳ねそうになる場合もありますが、これは試乗した他の軽自動車もほぼ同じ。前車に比べればホイールベースが短くてトレッドも狭いので、これは致し方ないのでしょう。ただ、フランス車のようなアルトエコの乗り心地は秀逸でした。

未だに慣れないのがブレーキです。これまでと同じ踏力でブレーキを踏んでも、イメージ通りに減速しない感覚です。もちろん強く踏み込めば制動力はあるのですが、前車はブレーキが優秀だっただけに少し違和感を感じています。女性や高齢者のユーザーも多い軽自動車ゆえ、もう少し初期制動力を重視するカチッとした効き目のほうが、安心感はより一層増すような気がするのであります。

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得るものもあれば失うものもあり。ここ十数年4台続けて慣れ親しんだステアリングオーディオリモコンは無くなりました。また、足踏み式サイドブレーキにもまだ慣れません。運転中に電話が入ると無意識に左手でステアリングをまさぐり、停車すると左手でサイドブレーキのレバーを探します。

延べ床面積の単価を考えれば、決して安いとは思えない軽自動車。しかし、そのコンパクトさがすでに癖になりそうな便利具合。これから様々なことに気付かされる部分もあるのでしょうが、現時点では期待値以上の出来栄えだったくろまめ号。大切な相棒としてじっくり付き合っていくつもりです。