カタカナが苦手な高齢者「トマトリゾート」

実家の父親やカミさんの母親クラスの高齢者になると、カタカナ文字にはあまり強くない場面を見聞きすることになります。テーシャツ(Tシャツ)やシーデー(CD)、デーブイデー(DVD)などは日常茶飯事。どうやら小さい「ィ」はどんどん省いて発音するようですが、意味は通じるので問題ありません。

IMG_1428

ずいぶん前のことですが、カミさんの実家へ寄った時のこと。義母がこう切り出しました。

こないだヨークベニマルで買ったエビとカニのリゾートはなかなか美味しかったなぁ。

ん?んんん?私の頭の中では、「エビとカニのリゾート」とやらを高速回転で思い出そうと想像し始めます。真っ白い砂浜に設えたビーチチェアで横たわるビキニ姿の義母。視線の先に広がる青い海には、無数のエビとカニが音を立てて飛び跳ねているのでしょうか。

い~やいや、そんなはずはない。そんなエビとカニの養殖場らしきリゾートなど聞いたことがない。

となると、知らぬ間にどこかリゾートのホテルか旅館にでも泊まりに行き、その日の夕食にエビとカニをたらふく食べたのだろうか。それなら何となくありそうだ。おそらく、エビとタラバガニが食べ放題のプランなのだ。

IMG_1430

だいたいにして、義母はカタカナの言いまつがいが少なくありません。ドラッグストアの「ヤマモトキヨシ」やジーンズショップの「アメリヤカ」など、もはや訂正する余地も無いほどの巧みさです。

するとカミさんが口を開きました。

ねぇお母さん。それってさぁ、「エビとカニのリゾット」のことじゃないの?

そうそう、んだがらエビとカニのリゾート。冷凍だったけど、美味しくて良かったんだでば。

IMG_1432

今日のお昼にサイゼリアで「エビと野菜のトマトクリームリゾット」を前にしながら、ふとその時のことを思い出しました。何年か前にイタリア料理店で食べた「ゴルゴンゾーラのリゾット」は米から煮込んだ本格派で、特濃ゴルゴンゾーラの風味とアルデンテの食感に、思わず中へ飛び込んで泳ぎたくなるほどの美味しさでした。サイゼリアのリゾットは、正確にはリゾット風の雑炊なのでしょう。

そんなことよりも、これが「エビと野菜のトマトクリームリゾート」じゃなくて本当に良かったと胸を撫で下ろすのであります。野菜好きのカミさんのおかげで、1年のうち少なくとも350日はトマトを口にする我が家。もしも「トマトリゾート」とやらがこの世にあるのであれば、それは夢の楽園と言えそうです。