トンカツ日和

「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句は、どうやら今日に限ってはバッチリ当てはまるようです。全国各地に相当の被害をもたらした台風が過ぎ去って、なぜかワンテンポの休符を経てようやく顔を出した太陽。そして彼岸と言えば墓参り。これを済ませないと落ち着きません。

今回もいろいろとお世話になった客人を丁重に仙台駅までお送りした後、事前に連絡を入れておいた通り実家へと向かいました。今年の春の彼岸は、寒かったとか暖かかったとか憶えているはずもなく、そのような季節の移り変わりに意識を向ける余裕すらありませんでした。

そしてお盆が過ぎ去り、早くも秋の彼岸。向かい来る台風に最大の注意を払いながら、過ぎ去ってみると一気に気温が下がったことに気が付くのです。実は実家へ行くのもお盆以来なのですが、こういうことでもなければ親へ顔を見せる機会はずるずると延ばしがちになります。

実家で私たちを待っていてくれた父を乗せて無事に墓参りを済ませると、戻った父は何やら外で作業を始める様子です。どうしたのか聞いてみると、どうやら先日の台風で裏庭の塀が倒れてしまったのだと。へいが倒れた?さっそく見に行ってみると、おそらく暴風で吹き飛ばされたのでしょう。1メートル50センチほどの幅ですが、隣人宅との境が何もありません。

あららら。この塀は築何年なの?そう聞いてみると、父も物ごころが付いた頃にはこの塀があったはずだから、推定築90年以上だと。おんぼろ屋敷にもほどがあるということですが、それじゃ頑張ってくださいね、と言い残して帰るわけにもいかず、手伝うことになったわけです。

もちろん、地震の被害でもあちこちやられたらしく、補修のために買っておいた板がちょうど残っているとのこと。震災による同じような塀の被害で兄が補修した部分は見事な出来栄えですが、今日はたまたま出掛けていないらしく、父が一人で補修するつもりでいたようです。

補修と言っても、90年前の板をまた使うわけにもいきませんので、すべて新しい板を使っての塀作り。ノコギリとトンカチを持つのは実に久しぶりですが、これはこれで何となく男の血が騒ぐのであります。もちろん父の指示を仰ぎながら、二人三脚のヘタレな大工仕事。

いやいや、本当に助かった。今日は設計図だけ書いて、明日にでも一人でやろうかと思っていたから、と父。いや、設計図って何よ、意味分かりません。お礼に夕食をご馳走するから、一緒に食べに行かないか? どっちみち今日は一人で夕食を食べる予定だったから。

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というわけでハナシが長くなりましたが、父が好きな大河原町の「とんとん茶屋」で私はトンカツを。大工仕事の間に部屋の片付けをしていてくれたカミさんは煮込みチーズハンバーグを遠慮無くご馳走になったわけです。

考えてみれば、トンカチも久しぶりでしたがトンカツも久しぶり。本当に美味しく感じたのは、ご馳走だったからばかりではなく、懸命に働いた後だったからということなのでしょう。やはり、汗して働いた後のゴハンは至福の食卓です。

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