高速道路無料化の迷走

先日に記事として取り上げた「高速道路無料化」。私と同様、そのことに興味を抱く皆さんは非常に多くらしく、今や街の話題としてもよく聞こえてきます。

しかしながら、どうも釈然としない部分も多く、国の急な施策に各自治体が振り回され、そして私たちも振り回されている。そんな状況がなきにしもあらず。何がどうなっているのでしょう。

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まず混乱しているのが、高速道路を無料で通行するために必要な「証明書」の名称です。これが各市町村で統一されていないので困ります。しかしこのハナシ、元々は「り災証明書」から始まっているようです。

「り災証明書」とは、各種の被災者支援制度の適用を受けるにあたって必要とされる家屋の被害程度について証明するもので、「全壊」「大規模半壊」「半壊」「一部損壊」などの認定があり、市町村が被災状況の現地調査等を行ってから証明します。

実は、私が住んでいる集合住宅は大した被害は無かったのですが、管理組合として仙台市へ申請し、「一部損壊」の認定を受けました。これは4月末頃のことです。つまり、その後に住民が個々に申請すれば、同じように「り災証明書」は取れただろうと思うのですが、実際には「一部損壊」で受けられる支援制度は無いに等しいので、おそらく誰も申請しなかったのでしょう。

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ところがどっこい。「高速道路無料化」の話しが聞こえ始めた5月ごろ、家屋の現地調査が必要な「り災証明書」を今から申請しても発行まで時間がかかるということに。

各市町村もそれではマズいと、正式な「り災証明書」の発行までの仮証明書的な意味合いで、その申請を届け出た時点で即時発行する「り災届出証明書」を用意するよう取り計らいました。

ところが、どっこいどっこい。今度は、元々の家屋被害のための「り災届出証明書」(半壊以上)なのか、「高速道路無料化」のための「り災証届出明書」(一部損壊程度)なのか、申請自体が混在するようになってしまったのではないでしょうか。それでは本来の「り災証明書」の発行遅延に拍車がかかるということで、「高速道路無料化」用は別に用意するとしたのでしょう。

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以上はあくまでも個人的な推測ですが、東北地方に限らず東日本全体が被災した先の大震災。本来の「り災証明書」をたとえ「一部損壊」でも取得すれば、東北の人たちだけではなく、関東や甲信越などの方々も「高速道路無料化」の恩恵は受けられることになるのかもしれません。

「り災証明書」があれば、どちらで高速に乗られても東北地方では無料で降りていただくことができますし、またお帰りも無料なのです。そう考えると、「高速道路無料化」は何も東北地方の被災者だけの話しではなく、広く被災された全域から東北へお越しいただく施策と言えます。

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家屋の「一部損壊」もなければ残念ながら「り災証明書」は発行されないのでしょうが、福島県の原発避難者の皆さんはもちろん無条件で、また宮城県や岩手県などの市町村では「停電」や「家財等の被害」で高速道路無料化専用とも言える「被災証明書(り災届出証明書)」が発行され始めています。しかしこの認定基準が統一されていないことにも問題が出ています。

市町村の「住民」に限定しているところ、あるいは震災当日に「その市町村に居た人」と間口を広く設定しているところ。これでは実際に被害を受けていても証明書を受け取れない人たちが出てくる可能性もありそうです。ここは一つ、国が何らかの指針を示すべきではないかと。

せっかく始まった「高速道路無料化」。すでに渋滞などの問題が指摘されているようですが、少しでも多くの人が、必要な時に気持ちよく利用できる施策になって欲しいものです。確かこの施策の目的は、「被災地支援」「被災者支援」「復興支援」だったような気がするのです。